恋する手のひら
「俺の強がりをすっかり信用して、今まで通りに接してくるんだもんな。
天然っつーか、残酷っつーか…」

思い当たる節はある。

実果はタケルと元通りになれたのが相当嬉しかったのか、前以上に彼に構うようになった。

本当はタケルが好きなんじゃないかと俺にも思わせるくらいなんだから、タケルだって振っ切ろうにも振っ切れないはずだよな。

恐らく本人は本当に喜んでるだけで、その態度が彼を困らせてるとは思いもしないんだろうけど。


大きなため息をつくタケルに、俺は思わず笑ってしまった。

「秀平はいいよな、実果と今度こそ正真正銘の両思いなんだから。
もう何の障害もないだろ」

タケルはコーヒーの空き缶をごみ箱に投げ入れて言った。

俺が黙ってタケルの顔を見ると、彼はきょとんとした表情で俺を見返す。

まさか俺がタケルに嫉妬してるなんて、思ってもみない様子。
全くどいつもこいつも鈍い奴は困る。
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