恋する手のひら
誤解
秀平が退院してあっという間に一週間が経った。
だけど、依然として彼の記憶は戻らない。
「そろそろ覚えた?」
私が作った座席表を秀平に突き付けると、彼は頭を横に振る。
「全然」
「授業はちゃっかりついて行ってるのにな」
タケルの言葉に、秀平はしれっとした顔でまぁな、と答える。
元々成績の良かった秀平は、記憶がなくなったとはいえ授業の理解力は半端ない。
暗記項目を除けば、むしろ私より成績がいいくらいだったりする。
「お前、覚える気ないだろ」
タケルに言われて秀平は苦笑した。
そういえば最近、笑顔を見る回数が増えてきた気がする。
「お前らだけ覚えれば、十分だもん」
私とタケルは特別だって言われたみたいでちょっと嬉しい。
そのとき、廊下から声がした。
「秀平!」
声を振り返らなくても分かる。
あの声は…。
「あれ、大塚?」
秀平は立ち上がって彼女の元へ向かう。
なんだ、希美ちゃんのことはしっかり覚えてんじゃん。
私が秀平に聞こえないようにつぶやくとタケルは笑った。
最近、希美ちゃんはやたらと頻繁に秀平に会いにくるようになった気がする。
「何話してるんだろ」
「さぁな」
「希美ちゃんて、まだ秀平のこと好きなんだと思う?」
「どうだろ」
どうも気の入らない返事に、私はムッとしてタケルを見た。
だけど、依然として彼の記憶は戻らない。
「そろそろ覚えた?」
私が作った座席表を秀平に突き付けると、彼は頭を横に振る。
「全然」
「授業はちゃっかりついて行ってるのにな」
タケルの言葉に、秀平はしれっとした顔でまぁな、と答える。
元々成績の良かった秀平は、記憶がなくなったとはいえ授業の理解力は半端ない。
暗記項目を除けば、むしろ私より成績がいいくらいだったりする。
「お前、覚える気ないだろ」
タケルに言われて秀平は苦笑した。
そういえば最近、笑顔を見る回数が増えてきた気がする。
「お前らだけ覚えれば、十分だもん」
私とタケルは特別だって言われたみたいでちょっと嬉しい。
そのとき、廊下から声がした。
「秀平!」
声を振り返らなくても分かる。
あの声は…。
「あれ、大塚?」
秀平は立ち上がって彼女の元へ向かう。
なんだ、希美ちゃんのことはしっかり覚えてんじゃん。
私が秀平に聞こえないようにつぶやくとタケルは笑った。
最近、希美ちゃんはやたらと頻繁に秀平に会いにくるようになった気がする。
「何話してるんだろ」
「さぁな」
「希美ちゃんて、まだ秀平のこと好きなんだと思う?」
「どうだろ」
どうも気の入らない返事に、私はムッとしてタケルを見た。