恋する手のひら
「何でこんな熱出てて気付かないかな…」

秀平は大きなため息をつきながら私に薬を渡す。

「さすがにそれだけ熱が高いと帰った方がいいな。
落ち着いたら送っていくから」

秀平の言葉に、私は慌てて首を振る。

「でも、沙耶の家に泊まるって行って出て来ちゃったし。
それに…」

秀平の服の裾を掴んだところで口ごもる。

もっと秀平と一緒にいたい。
せっかく二人きりなのに、帰るなんて嫌だ。

彼を見つめる私に、秀平は頭を掻く。

「そんな目で見るなよ、帰したくなくなる」

私の横に座ると、秀平は私の頬に触れた。
< 225 / 258 >

この作品をシェア

pagetop