恋する手のひら
「だいたい、お前ずるいよ。
無防備に家に上がり込むんだから」

秀平に触れられた部分が熱くなるのは、多分熱のせいだけじゃない。

「そうやって真っ赤な顔で見つめるのも反則」

秀平は私の頬を軽くつねりながら、人の気も知らないで、とつぶやく。

「え…?」

「俺がお前といてどんな気持ちにさせられてるか、自覚ないだろ」

さすがに秀平の言いたいことが分かり、私は真っ赤になる。

それって、そういう意味だよね。

ゆっくりと秀平を見ると、彼の顔が徐々に近付いてくる。

キスされる、そう思って私は目を閉じた。

もしかしたらそれ以上のこともされるかもしれないけれど、もうためらいはなかった。

秀平になら何をされても構わない、と心から思えた。

初めてだけど大丈夫かな。
風邪引いてるときにしたら、うつらないかな。

そんなことを考えていると、唇が触れる前に「やっぱりやめた」と秀平が言った。
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