恋する手のひら
「真面目に聞いてよ」

「だって俺には関係ないもん」

タケルはペロッと舌を出す。

そりゃまあ、そうだろうけど。
タケルってば、意外と冷たいんだ。

それとも、以前より二人の親密度が増してる気がするのは私だけなのかな。

秀平は不意に私たちの方を向いたかと思うと、希美ちゃんを指差しながら、
『一緒にメシ行ってくる』
と口パクで言った。

タケルが了解、と片手を上げると、秀平たちは行ってしまった。

「学食にでも行くんかな。
…そういや学食って言えば、ずっと前に古典の林原先生が生徒にカレーぶっかけられたの見たよな」

タケルは気を遣って別の話題を振ってくれるけど、私は二人が気になって堪らない。
心ここにあらずで、タケルの話も耳を素通りしてしまう。

「そのとき林原、すっげ怒ってさ…。
───ていうか、そんなに気になるなら俺らも学食行く?」

タケルはため息混じりに私に聞いた。

「やだ」

私は首を振る。
二人を見張るなんて、そんな惨めなことしたくない。

だけど、タケルはそんな意地っ張りな私の扱い方を誰よりも知ってる。

「ふーん。
じゃあ俺一人で学食行こっと」

「え?嘘!
ちょっと、待って」

結局、私もタケルに釣られるように二人の後を追うことになってしまった。
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