恋する手のひら
「もう止め止め。
この話は終わり」

タケルは強引に話を終わらせると、職員室の扉を叩いた。

担任の机の上には、膨大な量の資料が積まれていた。

「これ全部運べって言うのかよ。
鬼ー!」

タケルがぼやいたのを見て、側にいた先生たちが苦笑してる。

『資料室まで運んだら、プリント五枚ずつホチキスで綴じておくように』
ご丁寧にそんな指示も添えられていたため、全てが終わった頃にはゆうに三十分は経過していた。

「遅くなっちゃったね。
秀平を随分と待たせちゃった」

「いいじゃん、待たせておけば」

そんなことを言いながら私たちは教室へ戻ると、扉の窓ガラス越しに中を覗いた。

秀平は自分の席に着いて、本を読んでいるように見えた。

「あいつ、何読んでんだ?
エロ本だったりして」

タケルがにやりと笑いながらこっちを見るので、私は頬を膨らませて、タケルと一緒にしないでよ、と言った。
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