恋する手のひら
階段を転げ落ちた衝撃はあったのに、不思議と身体に痛みはなかった。

感じるのはなぜか、優しい温もりだけ。

恐る恐る目を開くと、秀平が私を抱えるようにして倒れていた。

「秀平…?」

すぐに、秀平が私を助けるために庇ってくれたのと、私の代わりに全身を強打したのが分かった。

「秀平っ…!」

声をかけても秀平は目を閉じたまま、動かない。
目の前の出来事が、現実だと認識できない。

「今、すごい音がしたけど…」

駆け付けたタケルの顔を見て、私は我に返る。

「どうしよう。
私のせいで、秀平が…」

気付けば私は、堰を切ったように泣き出していた。
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