恋する手のひら
「ごめん」

秀平の目が優しい。
私の好きな彼の目だ。

「もう二度と忘れない。
だから、もう俺の側から離れていかないで」

私から離れようとしたのは秀平の方じゃん。
そんな憎まれ口を叩こうとしたのに、私は思わずその手を握り返していた。

この大切な人を、失うことがなくて本当に良かった。

「───この手…」

ふと秀平がつぶやいた。

「え?」

「あのとき、この手があった…」

そうだろ?と言うように秀平が私を見た。

「俺が目を覚ますまで、実果がずっと手を握ってくれてた気がする」

確かに私はあのとき彼の手を握り続けた。

だって私にできることはそれくらいしかなかったから。

でも、どうして?
眠り続けていた秀平が覚えているはずないのに。
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