恋する手のひら
タケルの家を出た後。
秀平は少し先を、だけど私のペースに合わせてゆっくり歩いてくれる。

その様子があまりにもいつも通りで、やっぱりさっきのキスは夢だったんじゃないかと思えてくる。


そもそも私とタケルは、母親同士が友達だったこともあって赤ちゃんの頃からの付き合い。
お互い側にいるのが当たり前の腐れ縁で、幼稚園から中学校まで、いつも一緒だった。

そんな私たちが秀平と知り合ったのは一昨年、高校に入学してから。

お調子者のタケルと違ってクールな秀平は、最初はとっつきづらかったけれど。
バスケ部でチームメイトになった彼らが意気投合してからというもの、私たちは三人で一緒にいることの方が多くなった。

無口で無愛想で不器用だけど、優しい秀平。

初めから、隣のクラスに中学校から付き合ってる彼女がいることを知っていたはずなのに、気付いたときにはもう恋に落ちていた。

彼女と別れて欲しいとか、ましてや彼女になりたいなんて思ったことは一度としてない。
ただ、秀平の側にいられるだけで私は満足だった。


ところが、ある日突然、秀平は彼女と別れた。
まさに青天の霹靂ってやつだ。

だって二人は誰もが知ってるくらい校内で有名だったし。
秀平のことが好きな私でさえ、憧れちゃうくらいお似合いだったから。

別れた理由は今も教えてもらってない。
だけどかなり揉めたみたいで、二人の間には未だに触れちゃいけない何かがあるような気がする。

そんなこんなで、私は告白するタイミングを見極めることができないまま、気付けば二年も経っていた。
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