恋する手のひら
「───それを渡したやつが、お前の好きな相手?」

秀平にこんなことを聞かれるなんて、皮肉にも程がある。

秀平はすっかり忘れていても。
直接受け取るのことは叶わなくても。
それでも、このネックレスは秀平からのプレゼントだったのに。

そんな私に、秀平は良かったな、と言った。

「え?」

どういう意味?
今日の秀平は何だかよく分からない。

気付けば私の家はもう目前に迫っていた。

「前に、自分は半永久的に片思いだってぼやいてたじゃん。
そんなものもらったってことは、付き合うことになったんだろ?」

ああ、そっか。
ようやく秀平の意味深な言葉の謎が解けた。
秀平は私の片思いが実ったって誤解してるんだ。

まさか自分からのプレゼントだとは思わないだろうから、仕方ないけど。

私は苦笑いして首を振る。

「…そういうわけでもないんだ」

秀平が記憶を取り戻さない限り、私たちが両思いになることも、付き合うこともありえない。

今思えば、本当に秀平が私のこと好きだったのかも確かめようがないのだから。

そんなことを考えていると、どんどん気分が落ちていく。
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