恋する手のひら
席を立ったとき、ふと後ろの秀平の机に目がいった。

私はそっと机に手を置く。
どれくらいの間、秀平とちゃんと話をしてないだろう。

希美ちゃんと付き合い出したって聞いてから、挨拶もろくにしてないかもしれない。

授業中も全神経が背中に集中してるんじゃないかってくらい後ろばかり気になってるのに、振り返れない。

だけど仕方ない。
こうなることを選んだのは私なんだから。

臆病な私は、これ以上辛い思いをしたくなくて秀平を諦めたんだから。


今はまだ心にぽっかりと穴が開いたようで悲しいけれど、時間が経てばきっと大丈夫。

私は自分にそう言い聞かせるように深呼吸すると、日誌を抱えて教室を出た。
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