恋する手のひら
「まぁ、収まるところに収まった、ってとこじゃない？」

久美子はそう言って笑う。

「タケルはずっと、あんた一筋だったしね」

沙耶の言葉に、私は目を丸くした。

「二人とも、知ってたの？」

教えてくれていれば、こんなに悩まなくて済んだかもしれないのに、と私が口を尖らせると、沙耶が呆れ顔でため息をつく。

「あんなあからさまなタケルの態度に気付いてないの、あんたくらいのもんよ」

久美子が苦笑しながら続ける。

「タケル結構モテるのに、告白されても片っ端から断ってたの、知らないでしょ」

嘘っ！
そんなの初めて知った。

てっきり、顔はいいのに性格が三枚目だからモテないんだと思い込んでいた。

あんなに側にいたくせに全く気付かなかったなんて。
私ってば、どれだけタケルのこと眼中になかったんだろう。

鈍感すぎる自分に呆れ果てる。
< 85 / 258 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop