恋する手のひら
「ごめん、タケル。
待たせちゃったかな」

バスケ部の練習が終わる時間に合わせたつもりだったのに、私が着いた頃には体育館はもう静まり返っていた。

「じゃ、俺はお先に」

そう言って私たちの横を通り過ぎた秀平の隣に希美ちゃんの姿がないのを見て、本当に別れたのだと実感する。

でもそれなら、前みたいに三人で帰ってもいいのに、なんて思っていると、

「───あいつと一緒に帰りたい?」

私が考えてることが分かったのか、タケルに腕を掴まれ引き寄せられた。

タケルの眉がぎゅっと下がる。
まずい。
私、また心配かけてる。

私はタケルの腕を握りしめて、必死に首を振った。


タケルは帰り道もずっと無口だったくせに、私の家の前まで送ってくれたかと思うと、突然キスをした。

いつもと違う強引なキスに、私は思わずびっくりして彼を押し退けてしまった。

「どうしたの?」

いつものタケルじゃない。
今日は変だ。
そう、昼休みからずっと。

タケルはしばらく口を真一文字に結んでいたかと思うと、次の瞬間、私を強く抱きしめた。
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