春待つ花のように
「何も出来なくても、この国の体制に不満がある人間がいることを知らせればいいんだ」

「…嫌よ。そんなの。それじゃ、ノアルは命を無駄にしてもいいってこと? せっかく生きているのよ。2人で幸せに暮らしちゃいけないの?」

「暮らせるよ。必ず」

 ニッとノアルは笑う。真剣な瞳の奥では何を考えているのだろうか。二人の将来、それとも国の安泰か。

 マリナは下を向き、ため息をつくと彼に背を向けて横になった。

「マリナ?」










 カインは1階に降りてくると、カウンターの端の椅子に座る。

 店はとうに閉店し、布巾があちこちに干してある。明日の開店の準備も少ししてあった。

 誰もいず、店内も暗い。ローラやイブは、もう2階の自室で休んでいるのだろうか。
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