春待つ花のように
 イブの後ろで一度足を止めると、カインは頭をさげる。彼女は右手を上げて答える。

「あんたは、私が知っている男の中で一番、最低だよ」

 彼女の独り言を背中に突き刺しながら、カインは2階に上がっていった。

「ローラを泣かせるとわかっていて、行かせる私も最低な女…か」














「イブ、仕込み忘れたのって何?…カイン…」

 寝巻きに着替え終わったばかりのローラは、ドアをあける音が聞こえると振り返りながら口を開いた。

 ドアのところに立っていたのは、暗い表情をしているカイン。彼女は緊張した頬のまま、笑顔をむける。
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