春待つ花のように
「イブったら世話焼きなんだから…もう」

 ローラは彼に背を向けると、肩を振るわせた。きっと泣いているのだろう。

 これから彼が言おうとしていることを理解しているのだろう。ノアルとゼクス、そしてマリナを連れて彼がこの建物に来たときに、理解していた。

 カインそっとドアを閉めると、部屋にある窓に視線を動かした。

「私はいつもローラを泣かせてばかりですね」

 彼の発言にローラは何も言わない。溢れてくる涙で何も答えられないというべきかもしれない。

「笑っていてください。貴女の笑顔で元気になれる人は大勢います」

「カインさんは…?」

「もちろん。元気になれます」

「そう…」

 嘘ばっかり…そうローラは心の中で呟く。
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