春待つ花のように
「ノアルの好きな人、綺麗な人ね。肌の色が白くて、髪も艶があって…」

 ローラは言葉につまり、口を閉じてしまう。そんな彼女にカインは後ろから抱きつくと、耳元で囁いた。

「まだノアル様のことが気になりますか?」

「あんなに綺麗な人なら、好きな人の心を縛っておけるのかな…」

 カインの腕をそっと掴むと、小さな声でローラは言った。

「綺麗な人だからという理由ではないと思いますよ」

「私ではカインの心は縛れない。でも笑顔で送り出すことも出来ないの」

 カインは少し強めに彼女のことを抱きしめる。

「生きて戻ることが出来たなら、真っ先にローラ、貴女を抱きたい」

「嘘でも嬉しい」

 ローラの言葉に、カインの心に矢がぐさっと刺さったような気にさせられた。
 きっと彼女はわかっている。

 カインが思う以上に、ローラはカインを理解しているのだろう。
















「一人で行く気ですか?」

 静かに店のドアを閉めて外に出てきたカインに、ミゲルが声をかける。カインが彼の声に驚き、人影を探す。

 するとミゲルの他に、アンジェラ、シェリルが立っていた。
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