春待つ花のように
「宮殿の様子を見てくるだけです」

「そう言いながら、一人で出来る限りのことをしてこようと思っているんでしょ?」

「今なら、宮殿内はアスラン派残党の情報が飛び交い、まとまらずに慌しいからね」

 アンジェラとシェリルが微笑んで言うと、自分の行動をすっかり読まれていたことにカインは肩をすくめた。

「ミゲル、貴方はゼクスの傍にいてください。医学の心得がある貴方にはここにいてもらいたい」

 一緒についていけないことに残念そうな顔をするミゲル。今の騒ぎの中、アスラン派と知っていて治療する診療所などなかなかないだろう。

 たとえゼクスが怪我をしていなくても、この場所に残されるのは少し考えればわかることだった。

「俺も行くよ」

「ノアル様…」

 カインの後ろから顔を出すと、ノアルはにっこりと笑った。
< 243 / 266 >

この作品をシェア

pagetop