春待つ花のように
「残されて結果だけを聞くのは性に合わない」

「仕方ありませんね」

 カインは呆れた表情で口を開いた。彼の決意ある顔を見れば、意志を変える事が出来ないなどすぐにわかること。

 今まで、大人しくしていたことが珍しいくらいだろう。何でも自分の目や耳で確認して、次のステップにいくノアルなら、おいていくことは出来ない。
「でも人は切らないでください。そういうことは私たちの仕事ですから」

 ノアルは頷く。幼いときから、カインに毎度のように言われていた。いつも疑問に思っていた。

 人を切らなくてはいけない状況は、絶対に起きる。カインたちが危険な目に合うようなら、剣を抜かないでいるということは出来ないだろう。

 彼らが傷つき倒れる。その状況を見てやり過ごすだけなど、自分には出来ない。

 それでもカインは剣を抜いてはいけないという。何度もその理由を聞いていたが、今もその答えに納得しているわけではない。
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