春待つ花のように
 ここで頷いていても、実際の場面になってしまったら、自分は迷うことなく腰についている剣を抜いて戦うことを選ぶだろう。

「生き延びたら、飲み明かしましょう」

 カインがそういうと、アンジェラとシェリルが笑顔で頷いてその場を離れていった。

 もう会う事が最後かもしれない。失敗に終わるかもしれない。それでもいい。

 自分たちが今まで温めてきたこの10年間の思いを今、ロマにぶつけるときがきたのだ。一人ひとり抱いてきた思い。それを命をかけて、表現する。

「ノアル様、行きましょう」

「ああ」














 熱く盛り上がった夜になった。じっとお慕いあげていた女性と一夜を共にすることが、こんなにも心を熱くするなんて……。

 ユズキはベッドに横になると、天蓋を見上げて幸せに打ちひしがれる。

 このままずっとこの感覚を忘れたくないと思うのは贅沢な感情だろうか。

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