春待つ花のように
 隣には愛している女性がいて、温もりが伝わってくる。

「あの子たちが、再びここに来るのも時間の問題ね」

「レティア様?」

 ユズキは顔をあげると、隣で寝ているレティアの横顔を見つめた。

「ロイが気付き始めているわ。あの子たちが勝利するには、早急に事を進めないとだわ」

 力強い眼差しに、ユズキの胸がざわついた。

 嫌な予感が、全身に震えを起こさせた。

 ぎゅっと握りこぶしをつくると、『やめてください』と言いたくなる言葉をぐっと飲み込んだ。

「ねえ、ユズキ。お願いがあるの」

 聞きたくない、と言いたい。己が言って、レティアの気持ちが押しとどめられるのなら、口にしてしまいたい。

「何でしょうか?」

「あの子たちを導いてあげて」

 スッとレティアが、ユズキの手を握りしめてきた。温かい手なのに、ユズキにとったら針を刺されているような気分にさせられる。
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