春待つ花のように
「自分は、ずっとレティア様のお傍に……」

「ありがとう。気持ちだけ受け取っておくわ」

「レティア様、気持ちだけではなくて」

「ユズキ、私は新しい国を待ち望んでいるの。ずっと、ずっと望んでいたの。ロマ以外の人間が王になる日を」

 レティアが寂しげな笑みを浮かべた。

 レティアがロマの死を待ち望んで生きていたのを、知っている。間近でずっと彼女を見てきたから。
 
 だからって、ノアルたちが反乱を起こして城に乗り込んできたときに、レティアの元を離れるわけにはいかない。

 むしろ傍にいて、お命をお守りするのが自分の役目であろう。

「ユズキ、私に王妃としての役目をきちんと果たさせて」

「レティア様、それって……」

 ユズキは上半身を起こした。

 レティアも身体を起こすと、ユズキの手をポンポンと優しく叩いた。
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