春待つ花のように
「大丈夫よ。心配しないで。私は王妃よ。国王の最期くらい傍にいてあげるだけ」

 レティアがにっこりと笑う。

 レティアの力強い瞳が、ユズキをまっすぐに見つめている。

 わっと込み上げてくる感情をユズキは、胸の奥に押し込んだ。

 レティアが決めたこと。ユズキに意見する隙はなさそうだ。

「……承知しました。レティア様のお望みのままに」

 ユズキは、レティアの手をとってキスを落とした。

「ありがとう。ユズキを愛しているわ」

『私も』とユズキが声に出さずに、口を動かした。















「マリナ様とちゃんとお話しをしたのですか?」

 ノアルとカインの二人になると、カインは口を開いた。ノアルは下を向いたまま、フッと口を緩めて微笑む。

 その顔を見たカインは溜息をついた。


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