春待つ花のように
「きちんとお話しをするべきだと思います」

「カインこそ、ローラと話をしたのか?」

 ノアルに切り返されると、カインは視線を遠くにする。

「二人のことは知っている。誤魔化すな」

 ノアルは真剣な表情で言う。二人の仲を知っているのに、彼に気を使わせて嘘をつかれたくない。そうノアルは感じた。

 もう最後かもしれないのだ。ちゃんとカインの気持ちを知っておきたかった。

「頭で理解はしてくれていると思います。でも納得はしていないでしょうね」

 カインの言葉にノアルは無言で頷く。

「抱いたのか?」

 ノアルの質問にカインの顔は固まる。足を止めると、彼の顔を見て首をゆっくりと横に振った。

「いいえ。体の関係はありません」

「抱いてくれば良かったのに」

「抱いてしまえば、お互いに想いが残ってしまう。もう…会うこともないでしょうから」

 ノアルは怖い顔をする。それはどういうことなのだろうか。
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