春待つ花のように
「死ぬ気なのか?」

「例え生き残っても、一緒になることはないと思いますよ」

 カインは悲しい顔で微笑むと、ノアルに背を向けて歩き出した。遠くなっていく背中を見つめると、ノアルは顔を上げて走り出す。

「それじゃ、駄目だ! カインにだって幸せになる権利はある」

 カインの背中を掴むと、彼は叫んだ。個人の幸せを犠牲にして、豊な国づくりなどしたくない。我がままかもしれないが、皆が幸せになって、それでこそ豊な国を作り上げていきたいのだ。

「幸せになりましょう」

 にっこり微笑むカイン。彼の描く幸せとは何なのだろうか。ローラと一緒に家庭を築くことではない…そうノアルには感じた。

 自分を王にすること…それが彼の幸せか。そのためなら好きな女も捨てることが出来る。そういうことなのか。ふとノアルはココロが痛んだ。

「ゼクス、このまま静かに寝ているでしょうか?」

 話題をかえたカイン。ノアルは傷を負い、苦しそうに横になっていたゼクスのことを思い出した。

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