春待つ花のように
 ロマの腹部からは血が溢れ出し、夜着さえも赤く染めていく。

 レティアは嬉しさのあまり表情が緩んでしまう。ずっと見たかったのだ。ロマのその歪んだ顔を。

「いつからだと思います?」

 レティアは笑顔で質問する。綺麗に化粧して微笑む彼女の顔には憎しみの表情がにじみ出ている。

 手に持っている剣にはロマの血がべっとりとついている。

 いつからだろう。彼の死を願い、新しい時代を夢見始めたのは。テーラがこの宮殿に来てからだろうか。

 いや、もっと前…ロマがバルトを殺して国王になったときからかもしれない。テーラへの愛でしか動けないこの男を見限り、いつかこの男を殺す人間を作る…そんなことばかり考えていた。

 王族を憎む人間を多くするために、いろいろなことをしてきた。我侭な王妃を演じてみたり、ココロ冷たい女になってみたり、ロマの嘘に抵抗しなかったり…。

 いつか必ず、ロマを憎み、彼を殺す計画が持ち上がる事を夢に見て…。
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