春待つ花のように
 ロマが床に倒れて、その横に首がパックリ開き血を噴出して横になっているレティアがいた。

「アンジェラたちが…?」

 ノアルは口を手で押さえて言う。人が死んでいく瞬間を見るのは何回見てもいいものではない。

 10年前に気を失いそうなほど嫌な思いをした。大きくなった今でも、吐き気がする。

「違います。王妃が国王を殺し、自殺したのでしょう」

 彼の後ろから来たユズキが声をかける。冷静な表情で、ユズキは血を噴出す彼女の遺体を見つめる。

『レティア様のお望みのままに…』

 レティアから寝台の中で聞いたときにそう答えた。最初で最後の寝台での行いに喜んでいたら、一気にどん底に突き落とされたような気分だった。

 しかし彼女がしたいと思っているなら、それを自分に止める権利はない。それなら、彼女の願いが叶うように自分が動くだけ。
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