春待つ花のように
「その答えを私に聞くのですか?」

 ユズキはフッと笑うと、灰色の墓石を見つめる。

 そこには『ガーネ』の名前が彫られている。死んでから10年過ぎて、やっと墓をつくることが出来た。

 ずっと弔ってやりたいと思っていた。すでに遺体は、焼かれて灰になり、どこかへ飛ばされてしまった。

 しかし彼女が生きていた証は残してあげたい。その思いから、カインとユズキで墓石をつくった。

 他にも10年前に亡くなった人たちの墓もノアルの許可を得て作った。全員の名前までは覚えていない。

 しかしあの時に亡くなった人たちが一日でも早く成仏できる事を祈り、墓を作ったのだ。今回のことで亡くなった人々の墓も一緒に。

 ロマとレティアの墓は他の誰よりも豪華にした。前国王を殺し、国王になった彼でも国を支えてきたのだ。その敬意は示すべき、とノアルが示した。

「好きだったんです。王妃と知っていても、彼女のこと…」
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