初恋の実らせ方
「ま、いつもないけど」


その言葉に再び彩が頬を膨らますと、英知は嘘だよ、と笑った。


その目がとても優しくて、彩は胸がドキドキするのを感じる。
どうしてこんなに落ち着かないんだろう。


彩はそんな気持ちを悟られたくなくて、英知から目を逸らすと水を一口飲んだ。


ケーキが運ばれて来る頃にはそのドキドキはようやくおさまって、彩はフルーツがふんだんに使われたケーキに目を奪われる。


目を輝かせる彩を見て英知は笑いを堪えながらも、啓吾とのデートもこんな感じで楽しそうなのかと思うと素直に喜べない。


そんな英知を尻目に、彩はケーキを嬉しそうにほおばった。


一口食べて、おいしいー、と目を閉じる彩の様子に、案の定、店の奥で店員が笑っているのが見える。


「ガキみたい…」


英知は苦笑した。


「だって、ちょーおいしいんだよ」


彩はケーキをひとかけ刺したフォークを振りながら嬉しそうに言う。


「甘いものが嫌いなんてかわいそう」
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