初恋の実らせ方
「私が話したせいでしょ?
殴られたこと、何で言ってくれなかったの?」


「…言えるわけないでしょ」


「―――何で?」


英知は答えなかったけれど、彩には分かった。


きっと、啓吾が殴ったという事実を教えて彩を悲しませたくなかったんだ。
英知は、彩が啓吾を理想の王子様のように思ってるのを知ってたから。


ようやく分かった。
以前啓吾に、自分は彩が思っているような良い奴じゃない、と言われたことも。
どうして今まで彩がそれを知らずにいられたのかも。


「英知は優しすぎるよ、私に…」


英知は何も言わない。


「どうして…?
英知って、もしかして―――」


彩はそこまで言って言葉を切る。
その瞬間、英知は耳まで赤くなった。


今日彩を連れ出したのは、ただ彩とデートしたかっただけ。


もちろんマネージャーたちに嘘を吐いて用事をサボるのは気が引けたけれど、それでも英知は彩と一緒にいる方を選んだ。
彩をあのまま残していたら、絶対に後悔すると思ったから。
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