初恋の実らせ方
今までの行動がお人好し、で片付けられてしまうなら、英知は彩にとってその程度の存在でしかない。
それに気付かされ、英知は全てが嫌になる。


「―――何かもう、疲れた…」


英知は彩をじっと睨み、やがて目を逸らすと彩を置いて歩き出してしまった。


彩は小走りで英知を追う。
どうして英知が急に腹を立てたのか見当もつかない。


彩は英知の袖を引っ張って、足を止めさせようとする。
ちゃんと落ち着いて話をしたかった。


「ねぇ、何で急に怒るの?」


「自分で考えれば」


英知は勢い良くその手を振り払った。


英知の態度が信じられないほど冷たいことにショックを受け、彩はその場に立ち尽くす。


振り払われた自分の手を見ながら、この間と同じだと思った。


具合の悪い英知を看病するために家に行ったとき、彩を迎えた英知は今と同じくらい冷たかった。
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