初恋の実らせ方
「早く治るように、頬にキスでもしてもらおうかな」


啓吾はふざけて言うと彩の顔の高さに合わせるように屈み、彩に頬を寄せながら目を閉じた。


―――その瞬間、彩は息を飲む。
啓吾が屈んだ高さは、丁度英知の身長くらいだったから。


啓吾と英知の外見はよく似ていた。
そして頬にあるその痣もまた同じだった。


痛そうな青痣を目の前にして、彩は一瞬啓吾と英知のどちらと向き合い、どちらにキスしようとしているのか分からなくなる。


他の部員に見つからないように慌ててしたキスは、一体どっちのことを考えてしたものか彩自身も分からなかった。


そのとき弓道場から一際大きな歓声が上がる。


彩たちの高校の勝利を告げるその歓声に、二人は他の部員のもとへ向かった。


結果は辛勝、だけど立派な一部リーグ昇進だった。
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