初恋の実らせ方
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「―――啓吾、それ何?」


帰り道、啓吾が手に握ってるものを見て彩は聞いた。


手の平に収まる小さいそれは、草鞋のような形をしていた。


「これ?
今日俺の弦が切れただろ、それで編んだお守りみたいなもの」


弦が切れたときの矢が的に当たると、切れた麻弦にはマジカルな力が宿るらしい。
興味深そうに啓吾の手を覗く彩に啓吾は微笑んだ。


「欲しいなら彩にやるよ」


「え…いいの?」


彩が嬉しそうに見上げると、啓吾はこの間デートをすっぽかしたお詫び、とつぶやいた。


「そんなに気にしてるように見えた?」


「うーん。
―――ていうか、あれから何か元気がないような気がしたってのが本音」


啓吾の言葉はさすが名射手だけあって的を射ていた。
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