初恋の実らせ方
彩が啓吾と付き合うようになったとき、英知は長かった恋を諦めようと思った。
啓吾にはきっと何一つ敵わないから、彩を奪おうなんて考えもしなかった。


結局、英知には彩から身を引くことしかできなくて、早く忘れるためには彼女を避けるしかなかった。


しかしそんな決心は彩に再会した瞬間ものの見事に崩れた。


啓吾に嫉妬して、すぐに彩を奪い取って自分のものにしたくなった。


彼女にしたキスも。
啓吾が現れなかったのをいいことに適当な理由をつけて連れ出したデートも。
全てが今なお彩を諦めずにいられない証拠だ。


真希を責めることなんて、英知にはできない。
諦めようと思ったはずなのに、その気持ちが大きすぎてそれができなかったのは英知も一緒なんだから。


「キスしてくれたもん…」


「ーーー好きじゃなくても、キスくらいできんだよ…」


彩は英知のキスを拒まなかった。
それどころか、長く応えてくれたように思えたのに。
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