初恋の実らせ方
驚きで何も言えなくなった彩の脚に、啓吾はもう一方の手を伸ばす。


「啓吾…」


制服のスカートは短いから、啓吾の手の感触が素肌から直に伝わってくる。


大きく骨張った、大人の男の人の手…。
啓吾の体温に、体が強張る。


「や、やめて…」


「嫌だ」


そう言った啓吾の目からはいつの間にか笑みが消えていて、その真剣な表情を見て怖くなる。


彩はこんな啓吾を知らない。
彩が知っている啓吾は、彩の嫌がることをするような人じゃない。


だけど、今彩を抱きしめる啓吾は、彩が嫌がるのを聞いてくれない。


「お願い、離して…」


彩は震えるのを堪えながら、何とかそれだけ言う。


「俺ら付き合ってるんだろ?
何で嫌がるの?」


啓吾の静かな声に彩は黙る。
彼が言ったことは正論だったから。
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