初恋の実らせ方

初恋の告白

英知は帰りがけ、自分の家から誰かが出ていくのが見え、その人影が隣の家に入ろうとしたので声を掛けた。


「―――彩？」


その声に人影が英知を振り返ったので、彩だと確信した。


そして、ふと彩が今一人でいることに疑問を覚えた。
いつもなら、学校の登下校はもちろん、隣の家に帰るのにも付き添うくらい啓吾が付きっ切りなのに。


英知が走り寄ると、彩はお帰り、とつぶやく。
その笑顔は少し不自然に見えた。


「…どうかした？」


彩は首を振る。
だけど英知は、問い掛けた際に見せた彼女の一瞬の戸惑いを見逃さなかった。


あの成り行きでデートした日に、勝手に怒り出して置いて帰ったことを不満に思っているからかとも思った。


だけど、それにしては彩の英知を見る目がやけに穏やかで。
むしろ彼を見て彩がホッとしたように感じたのは英知の自意識過剰だろうか。