初恋の実らせ方
真希は呆気に取られたまま、彩を見送る。


「私、嘘は言ってないからね…」


そうつぶやいたとき、後ろから声を掛けられた。


「なぁ仙道、今の―――」


真希は振り返ってその声の主を見るなり苦笑した。
そしてしばらく笑い続けた後、絶え絶えの息の下で言った。


「私もそろそろ潮時かな」


＊＊＊＊＊＊


彩が急いで救護室に入ると、中にいた女性が目を丸くした。
よく見ると中学校の保健の先生だった。


「あら、高橋さんじゃない」


彩は去年まで保健委員だったので、彼女とは顔見知り。
簡単にあいさつを済ませると、彼女は怪我人が出たために球場に呼び出されたのだと教えてくれた。


「怪我、どうなんですか？」


「ええ…。
さっきまで痛がっていたけど、手当てが終わってようやく眠ったところよ」


そう言って先生は一つだけカーテンの引かれたベッドを指差した。
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