初恋の実らせ方
「大変じゃない!
あんた早く行って、英ちゃんの看病してあげなさい。
辛そうだったら良くなるまでいてあげるのよ」


「私が?」


嫌で言ったわけではなかったけれど、母親の視線がやたらと痛い。


「あんた心配じゃないの?
幼馴染みが病気ってときに、薄情な子ね…」


「そうじゃないよ。
ただ…」


ただ気まずいだけ。


彩は何でもない、とつぶやいて母親から鍋を受け取り、家を後にした。


緊張しながらインターホンを押す。


だけどその反応は異常な程に遅くて、しばらくして彩が不安を感じた頃、ようやく扉が開いた。


「―――何?」


英知の声には全く気力がないし、想像以上に顔色も悪い。


「英知…、すごい具合悪そうだけど大丈夫…?
これ、お母さんが英知にって。―――シチューなんだけど…」


英知は少し黙り、そして小さく首を振る。


食べたくないという意思表示だ。


英知はお礼だけ言っておいて、とつぶやくと扉を閉めようとした。
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