初恋の実らせ方
「中学生のくせに…」


彩に肘で突かれ、英知は嫉妬すらされないことが悔しい。


「彩が遅れてるんだよ」


気付けば強がりでそう言っていた。


「キスもさせてもらえないなんて、かわいそうな兄貴」


彩はその言葉で思い出す。
キスを拒んだあの日、啓吾はすごく残念がってた。


きっと英知の言う通りだ。
キスもさせない彩に、がっかりしてるんだ。


好きな人を落胆させてる自分が情けなくて、気付けば目に涙が浮かんでいた。


黙り込んでしまった彩を見て英知は慌てる。


「ごめん」


泣かせる気なんてなかった。
ただ啓吾のことで頭を悩ませる彩が面白くなくて、からかってしまっただけだ。


好きな子をいじめてしまうなんて幼稚な愛情表現だって分かっているのに。
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