LOST OF THE WORLD

友人

地下鉄を出て五十歩程歩いた時、空気が不意に暖かくなったのがわかった。空が幾分よくみえるようになり、景色もさっきよりか広がる。正確には道路も広くなったのだが、人が多くなったせいで先程より狭く感じた。通行人の体温と自分の体のほてりで、世界ががらりと変わった気がする。ちょうどこめかみあたりを支配していた氷のようなものが、ピキッと割れる音がした。




空港まで行くには、ここから後数分歩いたところにある、タクシー乗り場までいかなくてはいけない。

もう先に圭一が車を止めておいてくれてるだろう。




家をでる時に打ったメールの内容を思い出す。

5分くらい遅刻するといったが、このままいくと2分程度ですみそうだ。


最も遅刻することに変わりはないのだが。


きっと圭一は、2分なんぞ遅刻のうちにも入らないといって、笑い飛ばしてしまうだろう。



そうだ、圭一とあいつは違う。


それを履き違えちゃいけないんだ。



ユキは自分の心にもう一度鞭を打つ。





震えて止まりそうになる足をなんとか動かしながら――。
< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop