猫のワルツ
曇り
「センパーイ」
「タマ、また来たの?」
「うん!!」
「タツ、タマってひどくないか?こんな可愛い子なのに」
「だって、猫っぽいだろ」
タツと呼ばれた男がクククッと鼻で笑いながら、タマと呼ばれた女の子の頭を撫でる。
タマこと西村菜都美(にしむらなつみ)は一年生の女の子。
タツと呼ばれていたのは、矢部龍史(やべたつひと)。
二年生で、何でも出来てかっこいいと全学年の女子から人気なのだ。
そんな龍史に菜都美は一目惚れしてついて回っているのだ。
「ねぇ、先輩。先輩から見たら私は迷惑な存在かな?」
「いや、別に?タマは撫でやすいから好きだよ」
「えへへ、ありがとう」
「なんでそんな事いきなり言うの?」
龍史が心配そうに菜都美の顔を覗き込む。
菜都美は顔を真っ赤にしながら答える。
「なんでもない。明日もまた来るね」
「あぁ、待ってるから」
「なっちゃん、バイバイ」
「バイバ~イ」
龍史の友だちには『なっちゃん』と呼ばれて可愛がられているのだ。