猫のワルツ
「もう良いよ。やるよ」

「ほんとですか!?」

「食い意地張ってんなぁ」

「そ、そんなんじゃないです~」


そう言いながらも菜都美は、ポテトチップスの袋を手放さない。

龍史はその光景が、本当にペットのように感じて、菜都美の頭を撫でた。


「ほんとに猫だな。なぁ、タマ…お手」

「…猫はお手しませんよ」

「お前は、頭が良い猫なの」

「頭良くないもん」

「誰が本当の話してんだよ。女の子は少しバカの方が可愛いよ」


無意識な甘い言葉と無意識なフォロー。
振り回される菜都美の心。

それでも菜都美は、龍史が大好きなのだ。


「それ、褒めてる?」

「褒めてる、褒めてる」


龍史は笑い続けている。
亮はそれを見ながら、呆れて立ち上がる。


「亮?」

「俺、用事あるから。先に教室行くわ」

「あ~、はいはい」

「呼び出しされたんですか?」

「なっちゃんとかタツと違って呼び出しされたことねぇよ」

「俺もないから!!」


龍史が必死に言う。
ははは、と笑いながら亮は校舎に入って行った。
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