猫のワルツ
菜都美がチラッと、龍史を見る。


「何見てんの?」

「いや、かっこいいなぁって」

「はぁ?」

「先輩とデートできる子がちょっと羨ましいです」

「…え?」


キョトンとした顔をして、龍史は菜都美を見る。


「私もしたいです。でも、他の子と一緒じゃ嫌だ」

「デートはいつも一対一だぞ?」

「そういう意味じゃないです」

「わっかんねぇな」

「別に良いですよ。飼い猫の勝手な願い事です」


切なそうな顔をする菜都美。
龍史はその顔には気が付いたが、かける言葉を見つけることが出来なかった。


「先輩?」


言葉につまる龍史に気が付いて、菜都美が声をかける。


「デートする?」

「…今は、しません」


菜都美は龍史の目をみないように下を向いた。


「今は?」

「私は先輩の一番が良いんです。一番になれたらデートしたい。意味分かりますか?」

「え、と…」


龍史の目が泳ぐ。
菜都美にはそれがわざとなのか、本気なのか分からなかった。
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