猫のワルツ
菜都美が目を開けて飛び込んで来た光景は、びっくりなんて一言では片付けられないことだった。


「タツ君…」

「何してんの?」

「いや、これは…」


3年の女の目が泳いでいる。


「俺の大切な人に何してんの?」

「…え、付き合ってるの?」

「そんなんじゃない。俺らはもっと深い絆で繋がれてんの」


菜都美と3年女子の間に立っている龍史。

菜都美からは龍史の顔は見えなかったけど、3年女子の焦り具合を見て、龍史が彼女たちを威嚇しているのは分かった。


「せんぱ…」

「菜都美、行くぞ」

「でも…」

「良いから」


手を引かれて歩く。

何か話したかったけど、泣きながら走りさってしまった恥ずかしさと助けられた嬉しさとで上手く言葉が口から出なかった。


「もっと早く助けてくださいって言えないわけ?」

「それは…」

「だいたい、いきなり逃げるし」


龍史が菜都美を見た。
何故か菜都美は、それだけで涙が溢れて止まらなかった。
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