猫のワルツ
「ああやって誰にでも懐くし、猫みたいだろ」

「だからタマなの?」

「うん。可愛いだろ」

「お前、そのうち嫌われるぞ。タマって今時、猫でもそんな名前ねぇよ」

「でも本人が気に入ってるし」


龍史が親友の亮に聞くように振り向く。
亮は驚いたような顔をした。


「好きな奴に呼ばれるんなら、タマでもなんでも嬉しいだろ。変なあだ名でも特別って感じがして」

「そんなもんなのか?」

「お前、ほんとにムカつくな。なんでこんなんがモテるんだよ」

「ごめんなぁ、モテて」

「うわ、ウゼェ」


龍史は、ははっと軽く笑ってみせた。

龍史は自分がモテることを自覚している。
だからたまにややこしいのだ。

龍史自身、とっかえひっかえしているつもりはないけど、他から見たらタラシ以上の何でもないのだ。


「なぁ、なんで迷惑~なんて聞いたんだと思う?」

「3年のお姉さん方にしぼられたんじゃね?龍史に近付くなぁ、みたいな」

「あいつ以外と繊細そうだから傷付いても誰にも言わなそうだな」


龍史は少し、考え込んだ。
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