猫のワルツ
それを見兼ねたように亮が助言する。


「なっちゃんのこと好きなら守ってやれば?」

「好きってなんだよ」

「ま、いいよ。なっちゃん可愛いし、お前が必要ないんなら俺にくれよ」

「は、なんだよ。それ」


龍史は亮を睨む。
ただ、龍史に「好き」という感情が芽生えたことはまだなかった。

勉強も運動もなんでも器用にできる男は、人間として、とても不器用な男でした。


「お前、ほんとになっちゃんはタマのまんまで良いと思ってる?」

「いきなりなんだよ。…あ、今日約束あったんだ。帰るわ」

「は?誰と」


亮が少し大きめの声で龍史を引き止める。


「女。今日だけデートしよって言われたの」

「そいつの事、好きとかじゃないだろ?」

「なんか奢ってくれるらしいし」


龍史が楽しそうに帰って行く。

亮はこれからの龍史のことを心配してる。
そして何より、菜都美が龍史の元に来なくなるのではないかと、心配していたのだ。


「絶対にタツはなっちゃんが好きだと思うんだけど…」


うわ言のように呟いた。
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