猫のワルツ
「ほんと、ふざけんなよ」
「別に、そんなつもりは」
「近付くなって言ってんの。まじ目障り」
「でも…」
「調子乗ってんじゃねえよ!!」
バシッ…
大きな音と共に感じる強い痛み。
菜都美は泣きそうになっていた。
「まじ近付くなよ」
三年の女子。
異様なまでの矢部信者で、龍史のまわりにうろつく菜都美が邪魔なのだ。
三年の女子はそのまま去って行く。
「だって好きなんだもん…。ほんとに先輩はモテモテだな」
叩かれた頬を軽く押さえる。
次の日、菜都美は龍史のところには行けずに教室にずっといた。
次の授業は体育。
菜都美が体育館へと続く道を歩いていると目の前に龍史を見つけた。
「菜都美、先輩だよ!!」
「うん…」
「菜都美?」
友だちも菜都美のおかしさに気が付く。
菜都美は、なんとなく龍史に会いたくない気分だった。
通り過ぎる…
その時だった。
「タマ?」
優しい声が、菜都美の耳に届く。