猫のワルツ
「タマって。無視すんなよ」

「先輩…」


菜都美は顔をあげる。
友だちは気を利かせて先に体育館に入った。


「いつも来る時間に来ないから心配したろ」

「ごめんなさい」

「元気ない?」

「うぅん。めっちゃ元気だよ」


無理矢理な笑顔。
だけどそれに、龍史は気が付かなかった。


「なっちゃん…?」

「なんですか?」


気が付いたのは亮。


「話、聞くから」

「…ありがとうございます。でも、大丈夫です」

「おい、何の話だよ?」


龍史が菜都美の腕を掴む。
菜都美はビクッと体を震わせ、そのまま俯いた。


「なっちゃん、話せる?」

「…はい」


亮が龍史が掴む腕をほどいて、菜都美の手を引いて歩き始める。

龍史は、ただそれを見ていることしか出来なかった。


「なっちゃん、大丈夫?3年の女になんか言われてるだろ」

「…え?」

「あいつ、一年の時に二年の女思いっきり振ったことがあって。そいつが逆恨みしてて…」


軽い笑顔を亮が見せる。
< 5 / 16 >

この作品をシェア

pagetop