both sides



「おはよー葉月!」
「おはよう貴子」


いつものように挨拶を済ませ、自席に着く。
東条貴子とは小学校の頃からの仲だ。どこかの貴族みたいな名前だが、その名の通り名のしれたお嬢様である。
なんでそんなお嬢様がこんな普通学校に通っているのかは謎だ。


「おはよ、葉月」
「遙、」


ドアの向こうから私の名を呼ぶ声が聞こえる。何度も何度も聞いた、何度も何度も求めた遙の声だ。
昨日、わけのわからないことを尋ねたのに普通に接してくれる遙に内心感謝しつつ挨拶を返す。
すぐにチャイムが鳴り、教室中に飛び交っていた甲高い声が一気に止んだ。

担任の葛西先生(因みに男)が入ってきて、日直が「起立、礼」とスムーズに進める。


「えー、今日も特に言うことはないが、怪我だけはしないように、以上」


まぁつまりは俺に責任を負わすな、ということだろうか。全く無責任な担任である。

隣に居る遙にちら、と目を向けると、遙も丁度同じことを考えていたのか、そのにこり顔と目が合う。


「帰り、アイスクリーム食いに行こうぜ」


小さい声で耳打ちしてくる遙に、私はこくりと頷いた。

私は頬杖をついて窓を見つめ、雲一つない空を眺めた。


「あーあ、」


一日が十二時間だったらいいのに。



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