both sides
「うわぁ…」
私は思わず声を漏らす。
店自体はとても小さいが、中はおしゃれだった。急いで店内に入ると、店員さんが温かい笑顔で迎えてくれて。
どうやら夫婦で経営しているようだった。
「なにになさいますか?」
「どうする?」
「んー、俺はやっぱりバニラかな?」
どれにしようか。悩みに悩む。
ガラスの向こうには色とりどりのアイスが並べられていて、全て食べてしまいたい衝動に駆られた。
「じゃあ私もバニラで」
が、優柔不断な私は結局バニラを注文した。
まあいいや、バニラも好きだし。
「はーい、四百円です」
「「えっ?」」
私と遙は同時に目を合わせる。確かにバニラと書かれている下には、二百五十円と書いてある。二人で五百円なはずだ。
「内緒よ。カップル割引」
「っ!」
カ、カ、カップル…!
その言葉を聞いた瞬間、自分の顔が一気に真っ赤に染まるのがわかった。
両手で頬を押さえながらも必死に否定しようした。
が。
何故かそれができなかった。
それは私だけじゃなく遙も同じだったようで。
密かに否定されなかったことが嬉しかった。
―――この気持ちは、なんだろうか。